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在来工法と伝統構法の違いを理解する

 在来工法と伝統構法の違いについては、はっきりと定義されてはいないものの、日本が西洋建築学の影響を受け建物の作り方を変化させていく以前の建築を伝統構法、それ以降の西洋建築の考え方を取り入れた作り方を在来工法と呼ぶことが多い。明治24年に発生した濃尾地震をきっかけに、「震災予防調査会」が発足、そこで初めて「建物耐震化」という西洋建築の考えが提唱されました。これがひとつの区切りとされています。

 それ以前の日本建築、つまり伝統構法による建築物は、建築年代や地域、気候風土などによってかなり幅はあるものの、ひとつの大きな特徴があります。それは、自然の特性を活かし、壁や金物に頼らず日本古来の技術によって組上げることで耐力を生み出す軸組構法である、という点です。

 山の多い日本では、木造建築が主流でした。夏には高温多湿になる日本の気候にも、温度や湿度でその状態を柔軟に変える木は合致していたといえます。これにより、木を使った建築物が多く建てられ、木造建築に関する職人の腕も卓越した結果、伝統構法が確立されていったのです。

 構造上の違いは様々な部分で見られます。ひとつひとつ紐解いていきましょう。

 まず、伝統構法では、締め固めた地面に礎石や独立基礎を置いて、その上に柱を建てます。これを石場建てといい、建物と地面は固定されていません。在来工法では、コンクリートでまず基礎を固め、その後アンカーボルトで建物と緊結します。

 また、貫・差物といった水平垂直の材を壁の補強として、継手仕口加工による木組みで柱と組み合わせて構成していく伝統構法に対し、在来工法では、筋交いなどの斜材を金物で強固に結合します。壁の素材も、土や板を使用する伝統構法に対し、在来工法ではボードやバネルといった耐力壁を用いるのが特徴です。

 使われる材料に関しても、在来工法は材質や大きさが狂いなく均一であることが求められますが、伝統構法は多様で不揃いな素材を用いて、職人の経験やテクニックによって適材適所にそれらを使っていきます。

 あまりに作り方が異なる二者ですが、これは建物の構造の考え方の違いによるところが大きいでしょう。例えば、伝統構法の場合、地震等の外力が加わると、建物は大きく揺れます。しかし、土壁が壊れることにより外力を吸収し、木組みだけで固められた構造体はしなったり曲がったりしながら外へ力を逃がします。柱が石から外れ、家が傾いても、構造体そのものは丈夫に組まれているため、揺さぶられても壊れにくい、柔軟な建物になっているのです。

 一方、在来工法は前述の通り、コンクリートで地面と一体となった基礎に構造体を緊結し、硬く固めて、揺れにくく、変形などもしにくいように設計されています。現在、建築基準法の考え方は耐震が基本となっており、日本の木造軸組構法住宅のほぼすべては在来工法で作られています。伝統構法を用いた建物は、1%程しかないといわれています。

 伝統構法は、木組みなどの知恵や技術、自然の素材を活かす工夫が光る作り方です。これは、日本各地の神社やお寺を作り修繕を行ってきた宮大工を中心に、長年にわたり受け継がれてきました。やわらかくしなることにより衝撃を受け流し、壊れない設計。それを実現するのに、宮大工たちの長年の経験と、木材や物理の知識、継ぎ目がわからないほど精巧に木と木を組み合わせる卓越した技術が必要不可欠であったことはいうまでもありません。

 日本が世界に誇る寺社仏閣は、多くの宮大工の技の結晶ともいえるわけです。

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