宮大工ツーリズムを「宮大工と技の披露+温泉旅館ステイ」で定義したことにも深くかかわるが、宮大工の組織というのは世界最古のファミリービジネスで、始まりは578年に遡る。1400年余りの歴史があるわけだ。徒弟など現在でいうところの従業員を抱えた「組織体」で、大工・建設「業」を継続的に営んでいた。つまり現在の会社としての運営をしていたことになる。四天王寺の建設から始まったが、それ以外の神社や、江戸など別地域での営業活動するものもいたようだが、寺院お抱え(専属契約の)宮大工が起源であり、新たな顧客の開拓に向けた営業活動や市場開拓ではなく、お抱え宮大工として相応しい技能を獲得し、維持することが求められた。
昔も今もこれからも、宮大工は人材育成が鍵。総棟梁の下で、いくつかの組に分かれていた。組同士で技能を競い合い、互いに向上していく仕組みが形成されてきている。
木組は木の癖組、木の癖組は、工人たちの心組。木に癖があるように、人にも個性がある。癖を見抜いて、それぞれを束ねてひとつにするのが棟梁の仕事だ。
古くから存続する老舗宮大工企業は、少なくとも30社以上あるが、現状の宮大工数は概ね1万人~2万人にまで減少。そのうちの認定棟梁はたったの100名。職人宮大工として、毎日作業に当たっているのはそのうちごくわずか。
希少価値と言えば聞こえはいいが、宮大工が少なくなればなるほど困るのは寺社仏閣だ。そうなると最終的には日本人が皆困ることになる。宮大工ツーリズムの発展による宮大工技術継承は文化観光のキモで文化保全のためにも宮大工ツーリズムへの参加を検討してもらいたい。