昔の建物は、礎石を使わない掘っ建て式。石を使わずに、地面に穴を掘ってその下をつき固めて柱を立てていた。これでは、じきに柱の根が腐ってしまう。土の上に直接柱が建っていると、どうしても柱が地面から水を吸い上げるからだ。それを克服するため使われるようになったのが礎石だ。
奈良時代の建物は床がないから礎石が人の目に触れる。人の目に触れるところは徹底して綺麗にするのが昔の宮大工の性で、礎石もきれいに加工してある。形を整えて、柱が載る表面も平らにしてある。ただ平らにして載せるだけだと、柱と礎石が簡単にずれてしまうため、柱と嚙合わせるための工夫がしてある。礎石の真ん中に突起を残しておいて、柱の下の面を掘ってかみ合わせるか、それとは逆に礎石の真ん中部分に穴を掘りこんで、柱の下の面を真ん中に突起を残すように加工して組み合わせる。つまり木組みでなく木と石の組み合わせだ。ノミを使って最初はおおざっぱに削って、次第に細かいところが合うようにしていく。
宮大工の目線で言えば、隙間なく合わせるというところまではしなくて良い。紙一枚の隙間もなかったら、そこに湿気がこもって腐りやすくなる。最後のところでは、適当に逃げているくらいでちょうどよい。