宮大工ワード集

常に木と会話せよ

 「木は鉄を凌駕する」。それが宮大工の魂を表す1400年続くい歴史を端的に表現している。

 1000年以上も前の建物が今もその姿を保っているのは、木組みの技術があるからにほかならない、とは昭和の名匠松浦昭次氏の言葉だ。木組み(別記事にて詳述する)とは釘やボルトなどの金物、つまり、金属部品を使用せずに、木材を組み合わせる木造建築技術で。そのテクニックは、200種類以上と言われる。

 例えば鉄とコンクリートでは、法隆寺の五重塔はできないとされる。たとえ無理に造ったとしても、五重塔とは似ても似つかぬ不恰好なものになってしまう。木は強く、軽い。木とコンクリートを比較すると、鉄やコンクリートの方が強いに決まっていると思う人かもしれないが、木は使い方によっては、コンクリートや鉄の数倍の強さを発揮する。両端から引っ張る、同じ力で押しつぶそうとする、それが木の特性だ。先にちぎれたり、つぶれるのは鉄やコンクリート。木は軽くて強いからこそ、法隆寺の五重塔は完成し、1000年以上も倒れずに建っている。逆に、鉄はさびて木を腐らせる。鉄を入れるために穴を開けると、その穴が強度を弱らせる。信じがたい話だが、法隆寺五重塔がいまも現存していることがその証となっている。

 もちろん、木を組み合わせただけでは建築材料としての木の長所を引き出すことはできない。

 「木組み」の技術があるからこそ、木の強さと軽さが生きてくる。それを活かすのが宮大工の腕の見せ所だ。だから宮大工は「常に木と会話して」最高の形で木材を使おうとしなければならないわけだ。

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