宮大工の目線

寺社仏閣に行ったなら

 寺社仏閣に行ったら何をみるべきか?その答えは宮大工が寺社仏閣を観察する目線に隠されている。

 原理原則としては、まず、屋根の姿を味わい、軒ぞりを見る、ことを心掛けてほしい。「屋根の反り」、「軒ぞり」は、美と技術を象徴するもので、いかに屋根を美しく見せるか、という一点に宮大工は精魂を傾けた。軒が程よく反って、空に向かって優雅な線を描いていれば建物も優雅に見える。屋根と軒の姿は非常に重要で、宮大工は、「反りを活用してどんな姿に見せるか」ということそのものに知恵をしぼり、技術をつぎこんできたのだ。

 例えば、飛鳥時代建立の法隆寺金堂の軒ぞりは非常に穏やか。軒ぞりの基本的な方法は、「棟木」から軒先に「地垂木」を伸ばし、その上に瓦を載せて軒ぞりをつくることにある。

 もう少し時代が新しくなると、「地垂木」の上に、「飛えん垂木」という別の垂木を載せて、より軒反りを強く出す(平等院鳳凰堂などはこの技術で作られている)。軒に美しい反りを出すため、飛えん垂木を載せるという手間のかかる作業をしているわけだが、この頃の宮大工は、手間暇がかかっても美しさのためには横着することなく時間と精魂を込めて堂宮を作り上げた。

 きれいな反りを出すためには、隅の方の垂木は、一本、一本、反り具合や太さを変えていくことが必要で、それをうまく納めるためには、それぞれの垂木が「丸桁(がぎょう)」などの部材のどこにかかるか、きちんと計算して割り出す必要がある。丸桁は垂木が上にかかってくる横方向の部材のこと。何の気なしに自社を眺めるのもいいが、宮大工目線で寺社を観察すると、宮大工ツーリズムがさらに味わい深いものになってくるのがご理解いただけるだろう。

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