大工道具と言えばかんなを連想する人も多いのではないだろうか。鉋台と呼ばれる木製の台に、鉋刃と裏金を差し込んだシンプルな構造の工具だが、その種類はかなり多く、木の表面を削って面を滑らかに仕上げるものは「平台鉋」、木材の角を取ったり、銀杏面・瓢箪面等と呼ばれる装飾を加えたりする「面取り鉋」、溝加工をするための「底取り鉋」、その他、小さな材料や仕上げなどに、「豆鉋」「小鉋」「反り鉋」などと呼ばれる小振りの鉋を使うこともある。宮大工が削り出すかんな屑は、向こう側が透けて見えるほど薄く均一で、まるで芸術品だ。
聖徳太子の時代、つまり法隆寺の建築には「槍かんな」が多様された。これを現代の宮大工に新しい形で伝えた西岡常一氏は、法隆寺昭和の大改修を指揮した宮大工として現在の宮大工の手本ともなっている立志伝中の人物だ。なめらかな切り口が可能で、湿気やカビを寄せ付けず、耐久年数を飛躍的に伸ばすことに成功、木の表面にあたたかみが生まれる、ともっぱらの評判だ。普通のかんなは、片方にしか刃がついておらず単純に引いて使うが、槍かんなは槍の穂先のように両刃で引いても押しても使える、という特徴がある。