神社、寺院、宮殿の建築や修復を手掛ける大工のこと。
何百年前、何千年も前に建てられた建物を修理して、その姿を次の時代に伝える非常に聖なる職業のひとつ。何千年前の宮大工たちの手仕事をその通りに再現する。新しいものを作りだすのではないが、むしろ基本に忠実なクリエイティビティが要求されるといっても過言ではない。
元の宮大工の仕事の跡をたどり、元の姿を残していくことが仕事の基本であり、元の姿を勝手に変えることは許されない。欠けたところを復元するときも、できるだけ元の形、元の風合いを生かす、と考えるのが宮大工的思考回路である。
国や自治体の登録有形文化財などこれらの古い建物の保存修理に求められるのは、器用さよりも正確さや確実さといえ、長い期間耐えられる建物、残る建物への現代の技術や素材で補修し、次の世代の宮大工に継承していくことが大切な心得である。
そのために、古材を丹念にばらし、カンナの削り跡や継ぎ手の手法から修理された時代を類推する。釘跡から部材がどのように転用されたのか、吟味する。木は生えていた方位のままに使われているか?木の癖を生かして組まれてあるか?どのように製材されたのか?、など古い建築物をひとつひとつひも解いていくことで、いつ、どのように作られ、修理されたのか見抜くのが宮大工独特の視点である。